トピックス

<相続法の改正>|2019年2月第149号より|

今回は、遺産分割に関する見直しから、配偶者保護と仮払制度についてご説明します。

【長期間婚姻している夫婦間で行った居住用不動産の贈与等の保護】

特別受益者の相続分に関する規定の民法903条に第4項が新設されます。

<第903条>

4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の
用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、そ
の遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

現行法だと、居住用不動産を配偶者に贈与又は遺贈した場合に、特別受益を受けたものとして取り扱われますが、改正後は、被相続人は特別受益の免除の意思表示をしたものと推定されますので、配偶者はより多くの財産が取得できるようになります(生活保障)。具体例については、法務省ホームページにも掲載されていますのでご参照ください。なお、この規定は、「推定する」なので、他の相続人がそれとは異なる事実を証明することができれば覆ります。

【預貯金債権の仮払い制度】

相続された預貯金債権について、生活費や葬儀費用の支払等に対応できるよう、遺産分割前にも金融機関から払戻しが出来る規定が2つ新設されます。1つは家庭裁判所の保全処分の要件緩和、もう1つが下記の家庭裁判所の関与無しに支払が受けられる規定です。

<第909条の2>

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1
に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた
額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯
金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権
利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権につ
いては、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

平成28年の判例変更で、預貯金債権は、遺産分割の対象に含まれることになり、相続開始後、預貯金債権は準共有となり、遺産分割を成立させるか、共同相続人全員が共同して権利を行使しない限り、単独では預貯金の払戻しはできないとされました。
例えば、亡くなった方の預貯金がA銀行に1500万円あったとして、相続人が配偶者と子1人だった場合の法定相続分は各2分の1です。配偶者が取り急ぎ葬儀費用として金融機関から払い戻せる金額は、この規定に当てはめると、1500万円×1/3×1/2=250万円となります。ただし、法務省令で定められた金融機関ごとの限度額は150万円なので、配偶者は150万円を単独で払い戻すことができることになります。

なお、これらの施行日は、今年の7月1日です。

【法務省ホームページ】
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html

関連記事

コメントは利用できません。