兄からの報告
「桜木大二郎さん。とてもしっかりしてた。大二郎さんのお兄さんは、お蕎麦やさんを経営していたそうだよ。全く行き来がなく、亡くなったことも奥さんから税務署の手紙を見せてもらって知ったそう。面倒だし、自分も姉と同様放置しようとした。妹が相続放棄をすると知って、自分もきちんと手続きしないと、自分が亡くなった後、奥さんが困るのではないかと気になって、それで奥さんに市役所に相談に行くよう頼んだのだって。
いくらかかる?と聞かれたから3万円からと言ったら、その場で3万渡された。」
おそらく、3万円では足りない。このあと、何度か病院に通うだろうし、手続きの書類の作成、必要な印紙の購入。裁判所への郵送料。
何も言わず、聞いていると、
「売却して、現金化することも可能だと伝えたところ、買い手を見つけるのも大変だし、そのために片付けしなきゃいけないだろうし、自分の身体じゃとても無理だし、かといって奥さんは、自分の入院費のために働いていて、とても片づける体力なんてないだろうって。何より、ほとんど行き来もしなかったから相続したいという気持ちにはなれないのだと言っていたよ。」
相続放棄の手続きは、進めてあげられそうだ。とりあえずよかった。と兄はほっとしていた。
それからすぐ、兄は、桜木さんの奥さんに電話をいれる。今日の報告と、相続放棄に必要な書類である大二郎さんの住民票を持ってきてほしいと伝えていた。
次の日には、旦那さんの住民票をもって桜木さんが事務所へやってきたようだ。忙しいようで、受付にあずけ、すぐに帰宅したという。
私の方は、相続放棄の書類の作成を兄に頼まれ、すぐに準備をする。
その日の夕方
相続放棄の書類の作成が終わり、兄にチェックを回す。私の作成した書類にミスがなければ、大二郎さんの署名と押印をもらえばいいはずだ。
「ねぇお兄さん。大二郎さんは、病院に自分の印鑑があるかしら。お兄さん、署名もらいに病院へ行くのでしょう?」
「あー、印鑑については、奥さんに時間あるときに大二郎さんに印鑑(認印)を渡すよう頼んでおいたよ。確か土日行くといっていたから、明日、明後日には、大二郎さんに印鑑が届いていると思う。」
「それなら、よかった。」
週明け(1/24)、兄は、外出次いでに、大二郎さんに会いに行くという。署名押印をもらうためだ。
「今週末には、裁判所へ提出できそうだね。無事放棄の手続きができそうだね。」
つづく