週明けの1/24の夕方
兄が外出から戻ってきてすぐ、私は、相続放棄の書類について押印もらえたか尋ねた。
「念のため、嫌な予感がして、外出先から奥さんに連絡入れたんだよ。印鑑届けてくれたかどうか。」
「うん」
「そうしたら、週末は、仕事が入って、病院へ行けなかったというから、今日は、病院へ行かずに、戻ってきた。」
「そっか。まだ月曜日だし。で、いつ届けてくれるみたい?」
「うん。1月27日(木)の遅い時間になりそうだと」
「えーじゃー、1月28日(金)署名押印もらいに行って、その日のうちに裁判所へ郵送だね。ぎりぎりだ(;゚Д゚)」
「そうなんだよ。そして私は、金曜日は都合つかないんだ。」
あーそうだった。確かその日は、遺言の相談に上条先生と出かける予定だった。私も、勉強のために一緒に同席させてもらう予定だ
「和花」
「うん。分かってる。私が病院行けばいいのでしょ。」
「うん。ただ、絶対に一人で病室に入らない事。必ず、看護師さんとか誰かと一緒に入って。」
「えっ、なんで、お兄さん心配しすぎ。大丈夫だから」
「和花。言うことを聞きなさい。守れないなら、行かせられない。」
いつになく強い口調だ。どうしたんだろう。
私が行かなきゃ期限切れだよ。
「はい。分かった。ちゃんとお医者さんとか看護師さんとか声かけて病室に入る。」
「それでいい」
金曜日1/28
兄の強い口調が頭をよぎって不安な気持ちで、病院へ行く(念のため、病院へは、今日、13時に行く旨伝えてある)。
ナースステーションで、声をかけると主治医の先生が待っていてくれいた。
「司法書士の神咲です。あのー熊木先生ですか」話しながら名刺を渡す。
「はい。どうも熊木です」という先生は、とてもさわやかな笑顔だ。
「わざわざ、先生がすみません」
「今日は、相談放棄の書類に署名と押印をもらうために、桜木さんの面会に来ました」
「聞いております。案内しますね。」
「あのー、確かこの間来た男の先生。えーと、神咲圭さんでしたっけ?えっと、同じ苗字ですよね」
「わー、兄の下の名前までよく憶えてますね。お医者さんは、脳の作りが違う。」
「あー。やっぱりそうなんですね。お兄さんなんだ。憶えているのは、私の名前と一緒だったからです。しかもびっくりなのが、僕にも妹がいて」
「まさか、私と同じ名前?」
「そう。そのまさかです。」
「えー。びっくり。そんな偶然あるんですね。」
「字が多少ちがいますが。僕の妹は、『和香』って書きます。」
「妹さんもお医者さん?」
「妹は、薬剤師をしています。」
「ご兄弟で優秀なんですね。」
「ところで、桜木さんですが、だいぶ悪いのですか。その余命半年だと奥さんから伺っていますが。」
「はい。残念ながら。余命の話は、奥さんにしか伝えておりません。」
「そうですか。分かりました。」
桜木さんの病室についた
つづく