『圭、和花またゆっくり遊びにおいでね。』叔父の顔がぼやけていく。
ジジジジジジジジ目覚ましの音で目が覚めた。 あー夢だったのか。懐かしい夢。小さいころ母の弟茂おじさんのところに、遊びに行ったときの記憶がよみがえる。あれから何年経ったかな。しばらく会ってない。
時計を見ると、出勤時間がせまっていた。慌てて支度を整える。
「お兄さんおはよう。今日ね、茂おじさんが夢に出てきた!懐かしいよね。夏に二人で遊びに行ったよね。」
「えっおはよう。」兄が、私を見てびっくりしている。
「どうしたの?」
「うん。昨夜、茂おじさんから電話があったんだよ。」
「えっ偶然。おじさんなんだって?」
「うん。体調崩したみたいでね。つい最近まで入院していたみたい。」
「具合、悪いの?」
「うん。」兄は、それ以上口を開かない。
「そっか。おじさんからの電話ってその報告?」
「あっいや、おじさん、小さな会社を経営していたでしょ。」
「うん。そういえば、何か、部品を作るような仕事をしていた。」
「そう。医療品に使う部品を製作していたのだけど。」
「うん。」
「おじさんね。もう体調も悪いし、そろそろ会社を畳みたいんだって。おじさんほら、子供いなかったでしょう?後継者がいるわけでもないし。おばさんも賛成してるみたい。そろそろ、もういいのではないかって。」
「うん。」
「それでね、会社の解散手続きを頼みたいって、昨夜電話が入ったんだ。」
「そうだったんだ」
「気持ちは、すぐに、駆け付けてあげたいのだけど、私は、今手持ちの仕事で身動きがとれない。」
「うん。分かってる。私でよければ、おじさんのところに行って、話聞いてくるよ。」
「うん。おじさんにも和花でよければ、行かせると伝えた。」
「今の、仕事にある程度めどをつけたら近日中に行って、解散手続き手伝ってきてあげて」
「だけど、私、解散手続きできるかな。話しくらいなら聞けるけど、やったことないのよね。」
「大丈夫。できるできる。」
「今日の夕方付き合うから、一度内容確認しよう。」
「はーい。」
それにしても急だなぁ。おじさんに最後にあったのは、いつだろう。おそらく、母の葬儀の時が最後だ。
体調そんなに悪いのかな。なんか嫌な予感がしてくる。
今日は、なんとなく身が入らないまま夕方になってしまった。
その日の夕方
「おじさんの会社の謄本はとった?」
「うん。とったよ。」
おじさんの会社は、有限会社で、取締役も一人だけからなるごく一般的な会社だ。
つづく