気がかりな案件が片付いて、私は、たまっていた事務処理をしていた。
12月は、あっという間に過ぎてしまうから少しでも、片づけておかないと。
事務所スタッフが帰宅し、帰り支度をしていたら電話がなった。上条先生からだった。
「あっ和花さん。今から、会社設立したいという方から電話がいくから相談にのってあげて」
「あっはい」私の返事と同時に電話が切れた。上条先生は、いつも忙しい。
たいていこんな感じだ。
兄に、電話の旨説明すると
「大急ぎの設立かも。今日が、12月5日でしょ。もしかしたら、年内。
あるいは、年始早々設立したいという方からの電話かも。和花、設立好きでしょ。
担当よろしく」
「はーい」 ○○好きでしょ。は兄の口癖だ。
ほどなくして、電話がかかってきた。
「税理士の上条先生から紹介されて電話しました伊藤と申しますが」
「あっ、はい。司法書士の神咲です。設立相談ってことで伺っています。」
「株式会社を設立したいと思っています。お話うかがいたいのですが」
「えーもちろん。ご都合のいい日に事務所にご来所いただけますか」
「はい。平日だと、12月10日の17時ごろ大丈夫ですか」
「え―大丈夫ですよ。お待ちしております。」
会社設立相談の場合は、たいてい、会社の種類の説明からするのだが、
今回は、株式会社を設立するって言ってたな。もう会社の種類を決めているようだ。
「お客さん電話でなんだって?」と兄。
「うん。株式会社を設立したいって。12月10日 17時に来ることになったよ」
「了解。設立は何度もやってるから大丈夫だよね?1人で」
「うん。会社を設立する目的をきちんと聞くのでしょ。」
「そう。もし、利益が上がってないにも関わらず、法人化したいというなら、きちんとリスクを
説明すること。私は、設立1年後に解散登記はしたくない」
「うん。わかってる。」
たまに、いるのだ。元請け業者から法人化しないと、仕事がもらえない。
だから、売り上げがないにもかかわらず、法人化する。という方が。
仕方がないのだが法人化すれば法人税がかかったり、社会保険の加入義務が生じたりと、
出費もかさむ。売り上げがないのであれば、すぐに資金繰りで息詰まる。
1年後に解散する会社もあるのだとか。そういうことのリスクも、きちんと説明しろ
と兄は言っているのだ。そして、そのようなお客さんであれば、できれば納得してもらい
法人化を見送るよう進言することもお客さんのためだと兄はいう。
つづく