株式会社設立 9/10

「次に取締役の任期について考えましょう。」

「今回伊藤さんの会社は、取締役1人。株式の譲渡制限の規定を設ける非公開会社です。非公開会社の場合は、取締役の任期は、最大10年です。」

「うーん。何年がいいとかありますか?」

「伊藤さんがお一人で取締役であるうちは、とりあえず、10年としていいのではと思います。ただ、新たに取締役を追加されたときは、任期の短縮を考えた方がいいかもしれません」

「10年にしてしまうと、その取締役とうまくいかなかったときに後々問題になるからです。例えば解任するにも解任理由に納得してもらえず、任期分の役員報酬を支払わないといけなくなる可能性もあります。なので、最初は、10年にして、新たに取締役を追加することになるときに、取締役の任期は例えば2年とかに変更することをお勧めします。」

「あー。そうなんですね。教えてもらって本当よかったです。」

「次に、事業年度を決めたいと思いますが、上条先生から何か言われていますか?」

「特に、言われておりません。いつがいいとかありますか?」

「例えば、事業年度を6月1~翌5月31日にした場合、申告が7月になるので、7月が忙しい時期なら避けた方がいいかもしれません。それからよく税理士さんが仰るのですが、一番売り上げが多い月は、事業年度の初めにもってきた方がいろいろと節税対策ができるといいます。例でいえば、売り上げが多い月が6月なら好都合でしょう。あとは、売上又は給与の支払いにもよりますが、現行では会社設立後、消費税が最大2年間免除されると聞きます。なので、今回1月が設立なので、それを十分に活かすなら1月1~12月31日の事業年度がいいのではと思います。ただ、事業年度については、税理士さんと相談をお願いしますね。」

「そうですね。僕上条先生と相談して連絡します。」

「承知しました。」

「次に、株主総会の決議についての話をしようと思っているのですが、当面株主は、伊藤さんだけなので、株主を増やそうとするときにお話ししてもいいと思っています。どうされますか」

「あー。よかった。ちょうど頭パンクしそうでした(笑)もし、株を譲渡しようとしたり、株主増えるときとか、取締役追加するときとか、必ず上条先生にご相談します。」

「えー。そうして下さい。定款は、最初に申し上げたように会社の憲法です。ですが、会社の成長とともに、変えていくものです。」

「会社の規模が大きくなれば、今の定款がきっと合わなくなります。その都度見直しすることがとても大切で、面倒かもしれませんが、それが後々のトラブル防止になります。」

「僕自身、今会社を大きくするということをあんまり考えていなくて、とても大切なことだと思うのですが、どちらかというと、会社には、必要最低限の財産が残ればいい。それより、働いてくれる従業員になるたけ多くの給料をあげたい。従業員が豊かで、心に余裕が生まれれば、きっと会社経営自体うまくいくと思うのです。細く長く続けていきたい。そう思っているんです。」

「伊藤さんの会社で働く従業員の方は、とても幸せですね。」

「今後のお手続きについてですが、まず、事業年度について、税理士さんに確認後、ご連絡ください。連絡を頂いたら定款案を作成し出来上がり次第、メールでお送りしますのでご確認下さい。その間に、会社の実印や銀行印を作って頂ければと思います。」

「分かりました。ありがとうございます。」

 

伊藤さんが帰宅したのは19時をまわっていた。

 

つづく

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