さっそく、ネットで調べた弁護士事務所へ電話してみた。弁護士につないでもらう前に軽く要件を話すと、その件については、すでに、別会社に窓口になってもらっているとのこと。そこから連絡がきたら、弁護士が手続きを進める手はずのようだ。まずは、窓口の会社に連絡するよう言われた。
なかなか一筋縄ではいかないなぁ。
めげずに、すぐ教えてもらった連絡先に電話する。おそらく、園田さんと同じような人がたくさんいるのだろう。話が早くすぐに調べてくれた。名簿があるようで、弁済済みということもその場で確認してくれた。
また、先ほどの弁護士から登記に必要な解除証書や委任状等一式、再度発行してくれる手配をとってくれるとのことだ。
よかった。これで抵当権抹消できそうだ。早く園田さんにこの朗報を伝えたい。でも、その前に
お兄さんに報告かな。お兄さん喜ぶだろうな。いや。お兄さんはきっと…
数日後、相続登記の完了と同じくして、弁護士からの書類一式が届いた。
名義人となった園田さんには、再度ご来所いただき、相続登記後に交付される「登記識別情報」などを
お渡し、大切なものだという説明とともに、抵当権抹消の件も説明する。
「ほんとうにありがとうございます。とても大変だったでしょう。ごめんなさいね。本当にありがとう。ずいぶん長いこと放置してしまったから難しいのではと思っていたの。」
「本当に、よかったです。私の方もとても勉強になりました。本日中に抵当権抹消の申請しますね。」
こんなに感謝されると照れくさい。だけど、本当によかった。ありがとうと言われると、心温まる気持ちだ。
その1週間後、抵当権抹消登記が無事完了した。
事務所スタッフが帰宅したころ、兄と自分の珈琲を淹れて兄に尋ねる。聞きたいことがあったのだ。
「ねぇ先生。」
「何、突然?」
「今回の抵当権抹消の件さ、清算人が選任されていて、連絡がとれるだろうっていつ頃から想定してた?」
「はははばれてた?うん。最初ネット謄本取ってくれたでしょ?それ見たとき。でも確証はなかったよ」
「えっその時から?でも、最初のって最初に取得したネット謄本は、不動産謄本でしょ?」
「でも、銀行名は書いてあるでしょ?銀行なら、合併で他の銀行になっているか、解散してるかだと思った。解散してれば、必ず、清算人がいるし、銀行の清算人なら弁護士だろうからね。ただ、清算人の弁護士が健在かは、心配だったよ。銀行の謄本で清算人が2人いるのを見せてもらったとき、大丈夫だろうと思ったけど。おそらく、1人はベテラン、もう1人は若手だと思ったから。若手と連絡がとれるだろうと思った。最も、今では、その若手もベテランだろうけど。」
「それじゃあ先生。私、あんなに調べなくてもよかったよねー。結構時間かかったし、大変だったのに。
もう、もっと早く言ってくれればいいのに。」
「それじゃー和花の勉強にならないでしょ。おかけで、休眠担保ばっちりじゃん。」
確かに勉強にはなったけど…
「まぁいいや さぁかーえろ!」
事務所を出ると、商店街からクリスマスソングが聞こえてきた。
最初に園田さんに会ってから、2か月が経とうとしていた。
完