遺言③

「はい。遺言があれば遺言が優先します。故人の最終のご意思を尊重するためです。そのため、遺言の存在をしらず遺産分割協議がされてしまい後から遺言書が発見された場合でも、本来なら、遺言が優先されるのが原則です。しかし、相続人全員がすでにした遺産分割協議に納得している等一定の条件を満たしていれば、先の遺産分割協議を認めてもよいという裁判例はあります。」

「せっかく、遺産分割協議が成立しても、あとからの遺言の発見によって気持ちに変化の生じる相続人が現れる可能性は、否定できません。」

「そうね。遺言が後から発見されたら争いの火種になりそうよね。」

「はい。せめて、遺言書の存在は、できるなら伝えておいた方が後々のトラブル防止になるかと思います。もちろん、内容を話す必要はございません。」

「そうね。分かりました。」

「遺言についてなのですが、その内容を決める前に、万が一私が亡くなった時の相続人は、夫と子供でしょうか?」

「はい。お子さんは、何人おられますか?」

「4人おりましたが、一人は、すでに他界しておりまして」

聞き取りしながら、兄が相関図を書いていく。

要約すると、早瀬さんの相続人は、旦那さん・長男・長女・次女・次男だが、長男は、すでに亡くなっているようだ。そして、長男には、奥さんと、子どもが二人いるとのこと。長女は、アメリカの方と結婚し、海外在住。次女は、日本に在住だが、北海道在住。次男は独身で単身タイにいるようだ。

現在早瀬さんは、旦那さんと二人暮らし。近くに亡長男の妻とその子供が住んでいるとのことだ。

「亡くなった息子の嫁は、相続人ではないのですよね?」

「はい。息子さんのお嫁さんは、早瀬さんの相続人ではございません。」

「そうですよね。私の子供たちは、近くに居ないこともあって、長男のお嫁さんには、だいぶお世話になっているの。長男が亡くなってから子育てしながら働いてとても苦労しているし、もちろん、孫の世話を私もしたけれど、彼女に少し財産を残したいわ。」

「亡くなった息子のお嫁さんにも財産を与える遺言をすることができますか?」

「はい。できます。ご自身の財産の行方です。自由に決められます。」

「遺言内容ですが、基本的には、誰にどの財産をどれくらいあげるのかというようなことでいいのですよね?」

「はい。他にも、遺言で書くことができる事項があります。」といって

兄が、遺言チェックシートをお渡ししながら、一つずつ説明を始めた。

 

つづく

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