「さっきの地裁の判例の話に戻るとね、特定の相続人に特定の遺産を相続させる旨の遺言は、直ちにその当該相続人に承継され、その遺産に関しては、遺産分割の協議を経る余地はないとの判例(最判平成3年)の趣旨を認めつつも、遺言者の通常の意思は、相続をめぐって相続人間に無用な紛争が生じることを避けることにあるのだからこれと異なる内容の遺産分割が全相続人によって協議されたとしても直ちに被相続人の意思に反するものとは言えない。といっていて、その事案では、遺言で遺産分割を禁じている事情もなかったこと、また全相続人の意見が一致していることから遺産を承継する相続人間の意思を尊重することが妥当である。と言っている。さらにね、さっきの平成3年の判例は、遺言と異なる遺産分割をすることが一切できず、その遺産分割を無効とする趣旨まで包含していると解することはできないと書いてあったよ。」
「1つ疑問。相続人間の争いで遺産分割協議の有効無効を争って裁判になったんだよね?全員が納得しているのになんで裁判になったの?」
「和花も判例読んでみるといい。面白いよ。簡単に言うと、争点が何個もあって、遺産分割協議については、第三者が遺産分割の無効を主張した。だけど、相続人間で遺産分割に異議を述べる者がいないし、この第三者にとって遺産分割の効力が法的地位を決定するものではなかった。それもあって遺産分割の効力を否定できないともいっていたよ。」
「なるほど納得。もちろん、個々の事案にもよるのだろうけど、要するに、遺言があっても相続人間全員で納得して遺産分割したのなら、それは、被相続人の意思に直ちに反する事とは言えないし、相続人の間の意思を尊重してもいいよねってことだよね。でも、お兄さん、もし、第三者が遺言の受遺者だったら、遺産分割は無効だったってことだよね?」
「そうだね。遺言の内容が、第三者に対する特定遺贈だったら、少なくとも、第三者が取得する部分については、遺産分割協議は無効で、その他の財産については、分割のし直しになるよね。」
「ねぇそれじゃーお兄さん、さっきの判例の第三者は、遺贈を受けたものではないのかな?」
「さっきの判例の第三者は、遺言内容とは関係がなくて、それも一つの理由として、判例は、遺産分割協議を認めた。興味があるなら判例読んでみて」
「はーい。」遺言内容と関係ない第三者がなんで他人の遺産分割協議の無効を主張した?お節介にもほどある。まったく????だ。判例読まないと全体がよくわかないなぁ。