「ねぇお兄さん、話は戻るけどさ、遺言の存在は、相続人に知らせるべきだとつくづく思ったよ。だって、遺言があること知らないければ、第三者に遺贈させることとした財産も含めて遺産分割協議してしまうでしょ?もう。争いの火種だよ。」
「うん。そうだね。それに遺言の存在を知って、遺産分割協議をするのと、知らずに遺産分割協議をするのとでも、大きな違いがあるよ。遺言の存在を知らなかったときは、当初の遺産分割協議でいいと思っていたけど、遺言が出てきて、その内容見て、とある財産が自分に相続させると書いてあったらもらえることを知った相続人は、分割協議自体をやり直したいと思うかもしれない。ケースバイケースだけど、差し支えないのであれば、遺言の内容も、太枠だけでも相続人全員で認識できたらもっといいと思う。私はね、司法書士は、登記だけじゃなく、身近な法律家として、いかに訴訟にならないように対策を講じるかのアドバイスをすることも使命の一つだと考えているんだよ。『遺言』は、相続人へ、スムーズな財産の承継をする手段の一つだ。有効な遺言なら遺産分割協議自体が不要になるからね。遺言する人の最期のメッセージが、相続人に届くことは大事だと思う。遺言書があとから発見されたり、遺言内容に不備があって相続人がもめてしまうことを、遺言者が望むわけがないでしょ。『相続』をきっかけに、家族がより強い絆で結ばれてほしいのに、その相続がきっかけで、相続人がいがみ合うことになってしまったら、こんな悲しいことはないと思うんだ。」
「うん。ほんとその通りだね。」
「だから、漏れがない遺言を書くお手伝いは、神経を使うよ。和花も早瀬さんから連絡くるまでに、遺言内容については、勉強しておいてね。」
「はーい」司法書士になってから、司法書士受験とはまた違う勉強が山ほどある。この仕事一生勉強がつきまとうなぁ。(*´Д`)
次の日から、時間を見つけては、遺言について勉強を始めた。
つづく