「はい。間違いありません。何か問題点などござますか?」
「そうですね。少し気になるところがあります。」兄が言いにくそうに口を開く。
「はい。なんでも仰ってください。」
「まず、ご主人については、都内のマンションだけでいいのですか」
「あー。そう思うわね(笑)。主人とは話をしていて、主人も納得しております。
というのは、私の死亡保険金の受取人を主人にしているのと、主人には、会社勤めのときの退職金、それから年金があります。なので、マンションの家賃収入で十分だっていう話になりました。」
「ちなみに、死亡保険金は、いくらですか?」
「2000万円です。」
「了解しました。他に保険の受取人になっている方はいますか?」
「いいえ。保険は、それだけです。」
「承知しました。」兄がメモを取る。「それから、もう1点きになることがあります。立ち入るようで言いにくいのですが、このご自宅の土地・建物を達彦さんにとのことですが…」
「何か問題ありますか?」
「例えばですが、この先、達彦さんが結婚し子どもを授かったとします。早瀬さんが亡くなると、今の遺言だとこの家は、達彦さんの所有です。真さんは、この家に住む権利はありません。達彦さんがご健在であれば問題ないでしょうが、万が一、真さんより達彦さんが先に他界した場合、家の所有権は、真さんから未来のお嫁さんとお子さんに移ります。そうなった場合、真さんは、とても居心地が悪いのではないか。また、達彦さんの配偶者は、経済的な理由で、売却を考えるかも分かりません。そういったリスクはあるかなと思います。」
「あー。確かにその可能性は、否定できませんね。そうですよね。先のことは何が起きるか分からない。万が一達彦が先に死亡しても、主人が安心してこの家に住めるようにする方法は、ありますか」
「いま考えられることは3つあります。一つは、ご自宅の土地・建物をご主人に相続させる。とする遺言とすること。二つ目は、配偶者居住権の設定をすること、3つ目は、不動産信託契約を結ぶことでしょうかね。」
「ややこしいわー(笑)でも、ご説明おねがいできますか?」
「もちろんです。なるたけ手短にざっくり説明しますね。一つ目は、簡単ですよね。遺言で自宅の不動産は、真さんにすると記載すればいいだけです。」
「そうですよね。でも、主人が、この家を相続した後は、この自宅は、どうなりますか?」
「真さんが、遺言を書かなければ、このご自宅の行先は、相続人間の話し合いで決めることになります。相続人とは、理子さん・舞子さん・達彦さん・壮太さん・咲良さんです。」