「では、主人にも遺言を書いてもらえばいいのかしら?」
「ご主人のご意思が早瀬さんと同じく達彦さんにご自宅を引き継いでもらいたいという意思があれば、その方がよいかと思います。」
「もう一つ配偶者居住権とはどのようなものですか」
「早瀬さんが亡くなっても真さんが亡くなるまで、又は一定の期間、真さんが無償でこの家に居住する事ができる権利です。簡単にいうと、この自宅の土地・建物を達彦さんに相続させるとこの土地・建物は、達彦さんの所有になり、当然達彦さんが居住できますが、建物に住む権利を真さんに与えるとする配偶者居住権の設定をすると、真さんに住む権利が与えられるということです」
「なるほど」
「3つ目は、どんな方法ですか」
「不動産信託というもので、今回の場合であれば、早瀬さんのご自宅を例えば達彦さんに託し、管理してもらいます。その管理は、早瀬さんのために行います。万が一早瀬さんが亡くなっても、真さんが今度は、その自宅にすむ権利を与えられるような契約内容にし、真さんが亡くなった場合は、信託契約を終了させ、自宅不動産は、達彦さんが取得するという内容にするということができます。」
「達彦に託すということですが、達彦に負担はかかりますか?」
「そうですね。信託内容になりますが、ご自宅の不動産の管理をしていくわけですから、不動産の修繕したり、固定資産税の通知が達彦さんにいきます。というのは、不動産信託契約を結ぶと、不動産の所有権は、形式的に早瀬さんから達彦さんへ名義が変更となります。そのための登記を申請します。」
「そうか。だから固定資産税が達彦のところに行くのね。」
「はい。ですので、固定資産税をお支払いする現金も一緒に託すのが一般的です。」
「そうよね。親の家に、住むわけでもないのに、管理させられ、固定資産税まで自己負担させられるなんて割が合わないわよね。」
「この信託契約なら、真さんが遺言をかかなくてすむのかしら?」
「自宅の土地・建物を信託財産とした場合は、少なくとも自宅の土地・建物の行先については、遺言を書く必要はございません」
「そうすると、選択肢としては①真さんに相続させるか②遺言で配偶者居住権の設定を記載するか③不動産の信託契約をするということでしょうか」
「はい。理解していただけたようでうれしいです。」
「真さんと相談して考えさせてもらえますか?」
「もちろんです。」
約2時間ほどお話しておいとました。
つづく